二項分布をどういうものか,いつでも思い出せるように備忘録を残しておきます.二項分布って,時間が経つとなぜか忘れちゃうので,少しくどいくらいの説明と例題を残しておきます.
二項分布は,一言で言うと,
反復試行において「ある事象が何回起こるのかを表した確率」
という解釈で覚えることにします.たとえば以下のような問題.
- サイコロを6回ふって,1の目が2回でる確率
- コインを5回投げて,表が3回出る確率
1について
1の目が出た時を○,1以外の目が出た時を●とする.サイコロを6回ふって,1の目が2回でるということは,たとえば,
○●○●●● とか,●●○○●●のような場合を指します.これに番号をつけて①②③④⑤⑥としたとき,①〜⑥の中から○の場所を2つ選ぶという問題になります.たとえば,②と⑤を選んだ場合を(2,5)と表すとし,それは●○●●○●を示します.
ところが,(2,5)も(5,2)も同じ●○●●○●を表すので,これは6つの中から2つを選ぶ「組み合わせ」になります(順列ではない)
したがって,1の目が2回出るケースは,\({}_6\mathrm{C}_2 = 6!/(2!4!) = 15通り\)となり,1の目が出る確率が1/6,1以外の目が出る確率が5/6なので,
\[ P = {}_6\mathrm{C}_2 \Bigl(\frac{1}{6}\Bigl)^2 \Bigl(\frac{5}{6}\Bigl)^4 = 15\times \frac{5^4}{6^6} = \frac{3125}{15552} \]
となります.
2について
同様にコインの表を○,裏を●として,コインを5回なげた場合に3回表が出る確率なので,
●○●○○ とか ○●○●○ とか ○○●●○ のような場合を考える.これを①②③④⑤として,○の位置を①〜⑤の中から3つ選ぶ組み合わせとなるので,\({}_5\mathrm{C}_3 = 5!/(3!2!) = 10通り\).
また,表が出る確率が1/2で3回,裏が出る確率が1/2で2回,それが10通りあるので,
\[P = {}_5\mathrm{C}_3 \Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^3\Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^2 = \frac{5}{16}\]
となる.
二項分布の定義
問題1, 2から,「1回の試行で事象Aの起こる確率を\(p\),起こらない確率を\(1-p\)とし,\(n\)回反復試行したとき,事象Aが\(x\)回起こる確率を\(P(X=x)\)とすると,
\[P(X=x) = {}_n\mathrm{C}_x p^x (1-p)^{n-x}\]
と表され,これを二項分布といい\(B(n, p)\)と書く.二項分布の平均と分散は,
\[E[X] = np\]
\[V[E] = np(1-p)\]
で表される.
この二項分布,定義は簡単だし平均と分散の計算もとても簡単だけど,どうも忘れてしまう.そこで,以下の実問題に近い設定の問題を想起のために残しておく.
問題1 (佐藤の確率統計 p.195 例)
ある機械で生産された製品の10%が不良品である.この機械で10個の製品を作るときに,そのうちの不良品の個数を\(X\)とする.次のものを求めよ.
(1) \(P(X=9)\) (2) \(E[X]\) (3) \(V[X]\)
解答1
(1) \(n=10\),\(p=0.1\)なので,
\[P(X=9) = {}_{10}\mathrm{C}_9 (0.1)^9 (0.9)^1 = 9\times 0.1^9 \]
(2) \(E[X] = np = 10\times 0.1 = 1\)
(3) \(V[X] = np(1-p) = 1\times 0.9 = 0.9\)
単に式に代入するだけなので答えは簡単に求まるけど,「二項分布がこういう実問題に使えるんだ」というのがわかって目から鱗だった.
次はちょっとだけ難しくした問題.
問題2 (佐藤の確率統計 p.195 例.自治医大1次)
500円玉3枚を同時に投げる試行を320回続けて行った.2枚が表で1枚が裏である回数の期待値を求めよ.
解答2
n=320なので,pが求まればいい.
3枚同時に投げて2枚が表というのは,表=○,裏=●とすれば,○○●,○●○,●○○の3通り(=\({}_3\mathrm{C}_2\)).表が出る確率も裏が出る確率も1/2なので,
\[p = {}_3\mathrm{C}_2 \Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^2\Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^1 = \frac{3}{8}\]
これを\(p\)とする二項分布は,
\[P(X=x) = {}_n\mathrm{C}_x p^x(1-p)^{n-x} = {}_{320}\mathrm{C}_x \Bigl(\frac{3}{8}\Bigl)^x\Bigl(\frac{5}{8}\Bigl)^{n-x}\]
となるわけだけど,問いは期待値の計算なので\(E[X]\)を求めればよい.したがって,
\[E[X] = np = 320\times \frac{3}{8} = \mathbf{120}\]
となる.
問題3 (統計学基礎 p.135 例1・改)
ある水族館で飼育されているタコには,サッカーの試合でチームの勝敗を予言する能力があるという.20試合中14試合の結果を的中する確率を求めよ.
解答3
n=20, p=1/2, x=14なので,
\[ P(X=14) = {}_{20}\mathrm{C}_{14} \Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^{14}\Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^{6} = {}_{20}\mathrm{C}_{14} \Bigl(\frac{1}{2}\Bigl)^{20}\]
ふぅ,これだけ例題を残しておけば,後で読み返したら思い出せるだろう.
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