面白い記事を読んだ.
これまで,創造性を発揮する年齢は,若ければ若いほどよいと一般的に言われてきたが
創造性の「内容」によっては,50代が最もピーク年齢だという.
リンク先のページでは,ノーベル経済学賞を受賞した人に対して,受賞の対象となった業績が何歳のときに行われたものか調べたとのこと.
「実験経済学」と「概念経済学」という2つの分類で調べた.その結果,概念経済学は20代後半だったが,実験経済学はなんと50代だったというから驚きだ.
私は経済学の素人だが,おそらく概念経済学は純粋な理論を扱い,実験経済学は実際の経済データに基づいた分析が中心(すなわち応用研究)なのだろう.
純粋な理論研究であれば,革新的なイノベーションは若いうちでないと難しい.それは他の学問でも同じだ.
たとえば純粋数学の研究は20代前半が能力のピークらしい.物理学でも理論物理なら20代後半がピークというのも聞いたことがある(ちなみにアインシュタインが特殊相対性理論を生み出したのは26歳のときだ).
さらにこちらの日経の記事
によると
「他者のアイデアを解釈し、組み合わせ、実行に移すための創造性も今後のイノベーション創出には不可欠であり、ベテラン従業員に期待される重要な役割」
と述べている.ベテランに期待される役割との記述なので,これは40代や50代を想定している言い方だろう.
ところが,この「他者のアイデアを解釈し組み合せて実行に写す」というのは,ベテランだけでなく工学研究では普通に行われていることだ.
どんな革新技術でも,通常は先人たちが少しずつ改良を積み重ねてきた過去の研究成果がベースにある.
昨今のAIブームの火付け役となったディープラーニングだって,元を辿れば,1957年にローゼンブラットが構築したパーセプトロンが原型だ.そこから線形分離不可能な問題が指摘され,誤差逆伝播法が提案され,勾配消失問題が指摘され,様々な活性化関数が提案され,異なる構造のニューラルネットが同時並行で多数提案された.
これらの背景の下,多くの研究者たちが,他者の様々なアイデアを解釈し,それらの知見を組み合わせて,工学における諸問題に適用した成果がChatGPTであったり,Stable Diffusionであったりする.
工学研究は本質的に応用研究である.
なので,経済学の例に当てはめると,実験経済学の方に対応する.そうなると,工学において画期的な研究成果を出せるのは,むしろ50代のベテランになってからかもしれない.
ちなみに私は昨年50代の仲間入りをした.これからが本番!(本当か?笑)
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