私が博士を取得するまでの紆余曲折を記事として残しておきます.
以前,別のブログで記事として書いた内容ですが,そちらのブログを閉鎖したのでこちらに移行するつもりです.一気には大変なので少しずつ移行します.
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12. 独り立ち
主査となっていただいた教授が急逝したという知らせに,私はかなり驚いた.
まだ定年退職まで数年残していたはずだ.とても亡くなるような年齢ではない.死因は心筋梗塞だったらしい.
私はすぐに同じ研究室を卒業したOBたちに連絡して香典を取りまとめた.もちろん私自身も急いで葬儀会場に駆けつけた.会場では学会で見覚えのある著名な教授たちが大勢訪れていた.
電話で連絡をしてくれた助教授の先生,そしてあのアカハラ助手も来ていた.気のせいか昔よりやつれた感じで,こんなに背が低かったっけ?と思ってしまうほど小さく見えた.
昔のわだかまりは水に流して・・・・
などと思えるほど私は人間の器が大きくない.
彼には一言も話しかけることなく,さっさと会場を後にした.
会場を出たところでふと思ったのは,これから一体どうすればいいのかということだ.これで博士取得は絶望的になった.
もし他大学で取得するとしても,また再度社会人博士課程に入学するのはさすがに金銭的に無理だ.
そうなると論文博士しか方法はない.論博である以上,どこの大学であれフルペーパーの業績は不可欠.
だけど,どっちみちこれまでの内容でもフルペーパーの業績が1編もない.それなら,いっそのこと全く新しい研究を始めようと思った.
だけど,どんな研究をすればいいのか?
博士後期課程に進学したときも,結局具体的なテーマを決められなかった.
社会人になってからも,微分幾何や多様体論を用いた理論研究に憧れて勉強もしたけど,結局モノにならなかった.
自分の研究に対する考え方を振り返ると,いつの時代も「学位を取るための研究」を常に意識してきた.だけど,それは本質的に間違いである.その辺の考えを一旦白紙に戻して,自分の本当にやりたい研究とは何かを真剣に考え直した.
そもそもどんな研究がやりたくて研究者になりたいと思ったのか?
贅沢品を開発して金儲けすることを批判していたが,逆に言うと社会で必要とされる研究とは何か?
そのような研究の中で,自分の今の力量で実行可能な研究テーマはありうるのか?
かなり時間をかけてじっくり考え抜いた.
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