私が博士を取得するまでの紆余曲折を記事として残しておきます.
以前,別のブログで記事として書いた内容ですが,そちらのブログを閉鎖したのでこちらに移行するつもりです.一気には大変なので少しずつ移行します.
目次はこちらです↓
4. 所詮,カネだろ?
研究者の道を諦めてどんな道に進むべきかと考えた.工学部卒だとメーカーに就職するのが一般的で,修士卒だと特に名の知れた大手の求人も多かった.
だけど,私はどうも民間企業に勤める意欲がわかなかった.
なぜか?
とても青臭い考えになるのだが,企業は金儲けだけを考えて贅沢品を開発・供給するものだと思っていたので,そんなところで働きたくなかった.
金は最低限生活していけるくらいあればよい.自分はもっと本当に社会が必要とする仕事に就きたい.
これが私の信条であった.元々研究者を志したのもそういう考えからである.
だけど,そう考えると民間企業は大体NGということになる.研究者の夢も絶たれた.そうなると残されたのは公務員だけだ.
早速,私は春休みから公務員試験の準備に取りかかった.受験したのは,国家公務員 Ⅰ 種とⅡ 種である.地方公務員は土木建設系を除けば,技術職採用は5年に1人いるかいないかという程度で,かなりの狭き門.最初から諦めた.
私は公務員試験の勉強に集中し,研究室へ行く回数が次第に減っていった.
修士2年の4月になり新学期が始まると,大学のOB達が大挙して押し寄せてきた.
経団連の協定上,リクルート活動は解禁前だったはずだけど,実際にはOB講演などの名目で会社説明会などが普通に行なっており,協定など無視した学生獲得競争が盛んであった.
時代はバブル崩壊の余波がまだ残っていたけど,大手は関係ないのか大挙して押し寄せてきた.
OBがぜひぜひと強引に勧めてくるので,私はあまり気乗りではなかったけど友人数名と一緒に誘われるがまま晩ご飯をご馳走になった.
食事の後,どう見ても普通のサラリーマンでは行けないような高級スナックにも連れて行かれた.学生に対して「余裕ぶり」をアピールする作戦だったのだろう.うちの会社に就職すればそれくらい高給取りになれるのだと.
まぁ実際は接待費で落としてるだろうから,ポケットマネーではないと思うけどね.だけど,普通の中小企業だったら接待費でもこんな店には行けないだろう.
だけど,このことが私の反骨精神に火をつけた.
「所詮,カネだろ?」
民間企業に就職することは会社の儲けのために歯車になるだけだ.少しばかり給料が高くても,そんな人生に一体どんな価値があるのか?
もちろん,口にはしなかったけどね(苦笑)
私は接待を受けて以降,公務員になることへの意思がますます強固になった.当時はお金を稼ぐことは醜いことだと思っていたので,そういう極端な考えを持っていた.
醜い金儲けが世の中にたくさんあるのは事実だが,贅沢品であっても,エンターテインメントであっても,それを必要とする人がいれば立派な社会貢献だ.
そして,その対価を貰うのは決して醜いことではない.最低限の衣食住だけが正義という社会などありえないし,自分自身もそんな社会に住みたいとは思わない.
当時の私はそういう考え方ができなかった.
資本主義のしくみをよく知らない私のような人間の中途半端な左翼思想は最もタチが悪い.一般教養科目として,社会科学をきちんと学ぶことの意義は,こういう思い込みを矯正する事にあるのかもしれない.
そもそも私はなぜそこまでカネに対する嫌悪感があったのか?
今振り返ってみると,私の親や身近な親族が真面目に頑張っていたのに事業に失敗し,金に困っていた様子を間近で見てきたからだと思う.
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