このところ,どういうわけか,シャーロックホームズがよく目に入ってくる.昨日は出張先のホテルでTVをつけたら,偶然だけど英グラナダTVのホームズドラマが放映されていた.
若い頃,シャーロックホームズの物語を辞書を引きながら精読したことあったけど,これが文法的にも結構難しい・・・
それほど難しくないと言ってる人もいるけど,私にとってはなかなか難しかった記憶がある.もっとも,当時はまだ英検準1級を合格するずっと前なので,読解力が貧弱だったこともあるけど.
だけど,最近になってこのホームズものを英語の勉強教材として再考してもいいんじゃないか?と思うようになってきた.
その理由は以下のようなものです.
理由1:楽しい
1番の理由は楽しいこと.ホームズが嫌いなら楽しくないと思うけど(笑),少なくとも私はそこそこのホームズマニアなので,ホームズの物語を読むのはとても好きだ.
今の私にとってニュース記事を読んでも,さしてモチベーションが上がらないかな.役立つ内容でも続かなければ意味がないので,先ずは好きなことから始める方がいいのかもしれません.
理由2:著作権フリー
すでにホームズものは著作権保護の期間が過ぎているので,無料で簡単に入手できる.たとえば,The complete Sherlock Holmesというページに行けば,全作品をPDFやHTML,e-Pub版で簡単にダウンロードできる.
完全無料というのも魅力の一つかもしれない.
理由3:朗読音声がすぐ聞ける
これも似たような理由だと思うけど,朗読音声がYouTubeでも簡単に見つけることができる.
これは音読の練習や発音矯正に極めて有用で,しかも無料.これはかなり魅力的.
もし現代小説の朗読音声データを入手しようとすると,もう一冊購入するくらいの値段でAudibleから購入しないといけない.
理由4:グラナダTVのドラマを教材にできる
ジェレミー・ブレットが主演した英グラナダTVのホームズドラマは,おそらく最も小説で描かれたホームズに近いと言われている傑作だ.
中学校の頃NHKで放映されていたので,夢中になって観た.当時うちにはビデオデッキがなかったので録画出来ず,ラジカセで音声のみを録音して何度も何度も聴いた(日本語音声だけど・・・)
このドラマを今度は英語で見ると,生の英国人の発音を聞くことができる.
そして(著作権上,良いのか悪いのかわからないけど),このTVドラマもYouTubeで発見することができる.臨場感ある英語の発音を学べるのは映画やドラマの醍醐味ですね.
とまぁ自分にとってメリットと思えることを挙げてみたけど,欠点もいくつかあるかなと思ってます.
欠点1:表現が古風
ドイルはもともと歴史小説家を目指していたので,古風な英語表現を文章に取り入れることを好んでいたらしい.ホームズの小説でもその影響があるという(実際のところ私にはよくわからないが,専門家やネイティブが読むとそう感じるらしい)
そもそも,ホームズの物語は19世紀末に書かれたもので,日本で言えば明治.明治期であれば,日本語であっても現代小説と比較すると使われている単語も言葉尻も異なるし,少々文語的な文章だろうなと思う.英語でも事情は同じじゃないのかな?
そこで,明治期の日本のミステリーである黒岩涙香の「幽霊塔」を以前少しだけ読んだことがあるので青空文庫で調べてみた.冒頭はこんな感じだ.
「有名な幽霊塔が売り物に出たぜ、新聞広告にも見えて居る」
未だ多くの人が噂せぬ中に、直ちに買い取る気を起したのは、検事総長を辞して閑散に世を送って居る叔父丸部朝夫である。「アノ様な恐ろしい、アノ様な荒れ果てた屋敷を何故買うか」など人に怪しまれるが夏蝿とて、誰にも話さず直ぐに余を呼び附けて一切買い受けの任を引き受けろと云われた。余は早速家屋会社へ掛け合い夫々それぞれの運びを附けた。
ううむ,内容は理解できるけど,なんとも読みづらい・・・(苦笑).おそらく,ホームズの英語は,日本語でいえば黒岩涙香のような日本語なのかもしれない.
その意味では,現代の日本人が学ぶべき英語として,あまり適切でないと言われるのもわかるような気がする.
欠点2:役立つ単語や表現が少ない
現代社会で英語を使用する場面として考えると,日常会話,旅行会話,時事,ビジネス英語,その辺だろうか.学生だったら学術英語,エンジニアだったら技術英語も必要かもしれない.
ホームズの小説はそのどれにも役立たない.
もちろん,英語の読解力は向上するだろうけど,それ以外は純粋に楽しむことくらいしか,メリットが感じられないのも少々辛いところかもしれない.
即効性を求めるなら,TOEICやTOEFLの勉強をする方が遥かにいいだろう.
それでもやっぱり…
このように自問自答してみたが,ホームズものは私の中ではかなり魅力的だ.小中学校の頃からのファンだったし,今でもグラナダTVのドラマを観ることもある.
そう考えると,昔を思い出してもう一度読んでみるのもいいかもしれない.
先ずは短編から始めようかな.
勉強というより,ライフワークとして楽しみながら(いずれ全巻精読!)というのも悪くないだろう.